ラス前の戦いが終了した。
この瞬間で、ボクサー側は、松田側よりも、14枚、チップでリードしていた。
ボクサー心の中で「……松田は、オレがジョーカーを目で追えることに感づいているな!? しかし、それならなぜ、ヤキソバシャッフルをディーラーに要求しない!? む、ま、まさか、あああっ、そうか、奴は、ジョーカーのみならず、全部のカードの配列を読んでいたのか!? だから、ヤキソバシャッフルやヒンズーシャッフルはさせないで、リフルシャッフルだけさせていたのか!? リフルシャッフルだけなら、オレはジョーカーを読めるが、奴は全部のカードを読めてしまう! だとしたら、このままでは、最終戦、あいつに勝てない! どうすればいい!?」
ディーラー「最終戦をはじめます。アンティを5枚」
ふたりともアンティを5枚だして、それをディーラーが徴収。
ディーラー「それでは、シャッフルを始めま」
ボクサー「待て! ちょっと待て! ヤキソバシャッフルをやってくれ!」
ボクサー側ギャラリー「なななななにを言い出すの!? ボクサーはジョーカーを読めるのに、なんでわざわざ、それをしにくくなるように事をするの!?」
同「よくはわからんが、松田も、カード配列を読んでいるんじゃないのか!? だから、それを防ぐには、ヤキソバシャッフルしかないんだと思うぞ!?」
一方松田側なおたん「えええっ、どういうこと!? 松田はヤキソバシャッフルを求めないのも不思議なら、ボクサーがヤキソバシャッフルを求める、というのも不思議だわ!? どうして? ぶたくん?」
ぶたくん「わかんないよー」
ディーラー、松田に「ボクサーがヤキソバシャッフルを求めています。断ることもできますが、どうしますか!?」
なおたん「ことわって!」
松田「いいだろう。ヤキソバシャッフルを……」
ディーラー、ヤキソバシャッフル。
ディーラー「よろしいですか?」
ボクサー「ああ」
松田「いいぞ」
ディーラーはデックを組む。
おそろしいことに、ボクサーは、ジョーカーの追従に成功した。
最終戦、ボクサーが先フェーズ。
ディーラー「カットは!?」
ボクサー「3枚」
ディーラーは3枚カット。
ボクサー心の中で「これで、5枚目にジョーカーが位置した。松田が5枚以上カットしないなら、配給でジョーカーはオレに入る!」
なおたん「松田さん、カットして! このままだと、ジョーカーがボクサーの配給に入ってしまうわ!」
ぶたくん「そうだよ! カットだよ!」
松田「なしでいい。その位置から配ってくれ」
ボクサー心の中で「バーカバーカ! 松田はばかだ! カットすれば、オレにジョーカーが配給されるのを阻止できたものを!」
ディーラー「では」
と、5枚ずつ配給。
めくる前にボクサー心の中で「ジョーカーがきた。しかし他のカードが悪ければ、即おりればいい。アンティ分の5枚のロスだが、この分は、松田も同様にアンティ5枚をバンカーに払う。つまり、即おりて、この最終戦が実質不戦敗でも、14枚差で、オレたちの逃げ切りだ。もちろん、手が入れば、勝負に行ってもいい!」
そして手をあける。その手は、2ペア+ジョーカー、で、フルハウス完成形だ。
ボクサー心の中で「キターッ! ジョーカー含みのフルハウスは、ジョーカーなしのフルハウスには負けるが、それでも、これは願ってもない形だ! なぜなら、ジョーカーは1枚しかなく、それがここにある、ということは、奴は絶対にジョーカーを引くことはありえない。つまり、ロイヤルストレート、5カードはもうない。ジョーカー抜きの4カードもそうそうできるもんじゃない。これは勝てる!」
一方松田「……………………」
松田の配給はみせない。
ディーラー「ボクサー様、1回目のベットを」
ボクサー「上限の15枚」
ディーラー「松田様、1回目のベットを」
松田「上限の15枚」
と、双方、15枚ずつ積む。
ディーラー「ボクサー様、何枚交換しますか?」
ボクサー「交換はなしだ。このままでいい」
ボクサー心の中で「かえようがないからな」
ディーラー「では松田様、何枚交換しますか!?」
松田、長考。そして、
松田「おれも交換しない…………」
ボクサー心の中で「な、なんだと!? そこそこいい手が入っているのか!? いや、しかし、どうせブラフだろう、ここは勝負だ!」
ディーラー「それでは、ボクサー様、2回目のベットをお願いします」
ボクサー「ああ、上限の」
松田「待った!」
ボクサー「なんだよ!?」
松田「おい、いいことを教えてやるから、2回目のベットはちょっと待て」
ボクサー「なんだよ!?」
松田「クククク、ズバリ、お前の手をあててやろう。ジョーカー含みのフルハウスだ。おれの手も教えてやる。ジョーカーなしのフルハウスだ。だから、オレの勝ちだ」
ボクサー動揺して「なななな、なにを根拠に、ジョーカー含みのフルハウスと言い切るんだ!?」
松田「ああ。これから説明してやる。どうやら、お前は、ヤキソバシャッフルにもかかわらず、ジョーカーの追跡に成功したようだ。ためらわずに、カット3枚、といったことでわかる。おれはカットしなかったから、どうやらジョーカーはお前に配給された」
ボクサー「そうだとして、それがどうした!? カットしないお前が悪いんだぞ」
松田「最後まで聞け。で、だな、次に、お前は、1枚も交換しなかった。これがどういうことかわかるか!?」
ボクサー「なんだと!?」
松田「交換しなかった、ということは、手役が、5枚全部を使う完成形になっていて、余剰カードがない、ということだ。この17枚ポーカーでは、ロイヤルストレート、5カード、フルハウス、フラッシュ、この4通りしかない。これ以外の手役だと、余剰カードがあるはずだから、それを交換するはずだからな。で、この4役のうち、ロイヤルストレート、5カード、フラッシュだったら、オレの負けだ。こちらに勝ち目はない。なぜなら、ロイヤルストレート、5カード、フラッシュ、のいずれも、ジョーカーがなくてはできない。ジョーカーは1枚しかない。その場合、こちらが必敗になる」
ボクサー「そそそそうとも!」
松田「しかしな、そうそうこんな役が配給で完成していることはない。だから、オレは、お前の手を、ジョーカー入りフルハウス、と想定して戦うしかないんだよ。ここまでを、オレは、お前がカード交換しなかった時点で読んだ。もう一度説明すると、ロイヤルストレート、5カード、フラッシュなら、オレの負け。つまり、オレとしては、お前が『ジョーカー含みフルハウス』だろう、と想定して戦うしかなくなったわけだ。ま、ちょっと補足しておけば、おれの配給には、4種類ののカードが最低1枚来ている。だからお前にフラッシュができないことはわかっているんだがな。
さて、ジョーカーはお前に入ったから、カード交換してもオレはジョーカーは引き込めない、つまり、ジョーカーなしで、お前の手役をうわまわらなければならない。その手役とは、ジョーカーなしフルハウスか、4カードか、のどっちかだ」
ボクサー「で!?」
松田「そういう、お前に対抗できる手役が配給できたんだよ。この5枚でな。交換しなかった理由をよく考えて見ろ! フルハウスだから交換しない、か、または、4カードだから交換しない、か、のどっちかだと推理できるだろう」
なおたん「4カードだと、5枚目の余剰カードは、どうして交換しなかったの!?」
ぶたくん「ジョーカーはボクサーに流れてるから、交換してもジョーカーを引くことはない、つまり5カードの可能性はない、だから、交換しても意味がないんだ」
ボクサー、冷や汗。
ボクサー心の中で「たたたた確かに、理屈はとおっている。こちらにジョーカーがあって、交換しなかった以上、ジョーカー含みフルハウス、と読むのは妥当だ。そこまでタカを読んだうえで、交換しなかったのだから、やつは、ジョーカー抜きフルハウスか、ジョーカー抜き4カードができているのだ! フルハウス以外の手役なら、必ず交換がともなって奴によまれなかったものを、なまじ2ペア+ジョーカーできたために、動けなくなっちまった! しかし、これは、どうすればいい!?」
松田「話は終わりだ……」
ディーラー「では、ボクサー様、2回目のベットをお願いします」
ボクサー「ドロップ!」
ギャラリーどよめく。
ボクサー側ギャラリー「なにやってんだよ!? なんでフルハウスでおりるんだよ!?」
ディーラー「ドロップの場合、チップはバンカーが徴収します。生き残りアクティブの松田様のチップは、松田様に戻ります。それでよろしいですね!?」
ボクサー「ああ、いい。バンカーに15枚流れて、いままで14枚リードだったのが、1枚のビハインドになっちまうがしかたない。コールして負けると、15枚のチップが松田に流れて16枚のビハインドになっちまう。それよりはましだ」
ディーラー「ボクサー様、ドロップにより、ボクサー様のチップはバンカーが徴収、松田様チップは、松田様に戻ります。この結果、トータルで、松田なおたんチームが、現在14枚のリードとなりました」
松田、手をあける。
ブタだった。
ボクサー、驚愕。
ぶたくん「……!? オイラだ! 言いくるめだけで、ボクサーをドロップさせたのか!?」
END
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